韓国から届いた「おまけ」の税務処理 — サービス品文化と無償供給の落とし穴

韓国の業者にまとまった数のiPhoneケースを発注したときのこと。届いた荷物を開けてみると、注文した覚えのない充電器やディスプレイフィルムが一緒に入っていました。

不良品の混入? 発送ミス? ——いいえ、これは韓国でいう「서비스(ソビス)」、つまり「おまけ」です。

韓国との取引では珍しくないこの慣習ですが、日本側の経理・税務処理では意外な落とし穴があります。

韓国の「서비스」文化とは

서비스(service) は韓国で「おまけ」「サービス品」を意味する韓製英語です。

韓国では、大口注文に対しておまけを付ける商慣習が日常的にあります。飲食店でサイドメニューが無料で出てくるのと同じ感覚で、ビジネスの場面でも「たくさん買ってくれたからおまけしておくよ」という対応が普通に行われます。

よくある서비스のパターン

  • 大量発注時に関連商品をおまけで同梱(今回のケース)
  • 次回注文時の割引クーポンを同封
  • サンプル品を追加で入れる
  • 数量を注文より多めに入れる(「おまけで5個多く入れておきました」)

日本でも「端数サービス」や「試供品同梱」はありますが、韓国はその頻度と規模が大きい印象です。

困るのは日本側の処理

서비스(おまけ)自体はありがたいのですが、問題は見積書にも税金計算書にも載っていない物品が届くことです。

通関での問題

国際取引の場合、おまけであっても税関への申告が必要です。

  • 無償の貨物でも「インボイス(通関用)」に記載が必要
  • 記載がない物品は税関で止まる可能性がある
  • 関税は無償でも課税価格の申告が必要(ただし課税価格合計1万円以下は原則免税)

経理での問題

  • 無償で受け取った物品は「受贈益」として計上すべきケースがある
  • 仕入れ台帳に載せるべきか? 棚卸資産に含めるべきか?
  • 消費税の仕入税額控除の対象になるのか?

いずれも「見積書に記載がない」ことが問題の根本です。

韓国側の税務上の扱い

韓国の付加価値税法では、事業用資産の無償譲渡は「みなし供給(간주공급)」として課税対象になりえます。

みなし供給の原則

区分課税対象?
事業用資産の無償譲渡原則として課税(みなし供給)
販促目的の少額サンプル・景品例外として非課税のケースあり
個人的な贈答事業と無関係なら対象外

つまり、今回のように「iPhoneケースを大量発注したらおまけで充電器が付いてきた」場合:

  • 韓国の業者が販促目的の少額景品として処理していれば、電子税金計算書には記載されない
  • みなし供給として課税処理していれば、税金計算書に時価(시가)で記載される(韓国VAT法29条3項4号)

どちらの処理をしているかは韓国側の判断によるため、日本側からは分からないのが実情です。

トラブルを防ぐための対策

1. 事前に確認する

発注時に「서비스(おまけ)が入る可能性はありますか?」と聞いておくのが最もシンプルです。

추가 서비스 품목이 포함될 경우, 사전에 알려주시면 감사하겠습니다.
(追加のサービス品目が含まれる場合、事前にお知らせいただけると助かります。)

2. 見積書・インボイスに明記してもらう

おまけがある場合は、見積書や通関用インボイスに品名・数量・市場価格を記載してもらいましょう。無償品でも通関時に課税価格の算定が必要なため、価格不明の場合は同種・類似品の価格で評価されます。

품목: 충전기 (서비스/무상 제공)

수량: 10

단가: ₩5,000 (시가)

비고: 무상 제공

3. 継続取引なら取り決めを作る

定期的に発注する取引先なら、서비스品の扱いについてあらかじめルールを決めておきましょう。

  • おまけを入れる場合は事前通知する
  • 通関用インボイスに必ず記載する
  • 市場価格の何%以下なら「少額景品」として処理する

まとめ

韓国の서비스(おまけ)文化は、取引関係を大切にする韓国ビジネスの良い面です。ただし、国際取引では「書類に載っていない物品」が届くことで、通関・税務の処理が複雑になります。

ポイントは「おまけも書類に載せてもらう」こと。これだけで、ありがたいおまけがトラブルの種になることを防げます。

韓国の取引先に見積書を送る際は、こうした商慣習の違いを知っておくと、よりスムーズなやり取りができるはずです。

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